丹波布の、あたらしいカタチ
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兵庫県の中央部に位置する、丹波市。
ここが丹波布の産地であり、我々の暮らす自然豊かなまちです。
丹波布は、経緯(たてよこ)共に手紡ぎの糸を用い、丹波に育つ草木による草木染めを行っています。
過剰な自己主張が無く、静かで穏やかな風合いは、民藝運動の主唱者・柳宗悦に注目されたのを契機に復興されました。
手紡ぎ糸が草木の色を得て織り成す美は、多くの人を惹きつけてやみません。
ただ全てを手作業で行っているため、丹波布は大量生産できるものではありません。
そのため、なかなか人々の目に触れることができないことも事実です。
「素晴らしい丹波布をもっと多くの人に知ってほしい」
「fu-ko」はこういった思いから生まれました。
多くの人に身近に、「手紡ぎの温もり」を感じてもらえればと思います。
「fu-ko」という名前は風光明媚から引用しました。
丹波布を“風をまとい自然を肌で感じる布”とし、 “触れる風”“見る光”に焦点を当て、人名のような親しみやすさを持ってもらうために命名しました。
「fu-ko」が産まれるきっかけとなったのは、株式会社みんなの家の井口元さん。
当時、 丹波市の移住定住に関する窓口業務を市からの委託で行われており、
丹波にゆかりのある人が丹波市だけでなく大阪や東京等都市部に集う「丹波会」を開催されていました。
丹波会へ集う皆さんは、丹波出身であるなしに関わらず、それぞれ「丹波への想い」を持つ方々です。
そんな皆さんのために「丹波のもの」を使って、丹波市民であること、
丹波市に関わるものとして誇れる象徴を何か作ることができないか、という想いが「fu-ko」のはじまりでした。
「fu-ko」は出来るだけ価格を抑えたい、という思いから丹波布の端布(はぎれ)を素材に使用しています。
しかし全ての端布が使えるわけではりませんでした。
ここで力になって頂いたのが清谷啓仁さん。
以前、地域おこし協力隊として丹波布のブランディングに携わられていました。
清谷さんから丹波布の端布(はぎれ)を頂き、 試作品を作ってみました。
最初の試作から出来は上々で、縫製をしっかりと行えば、もう製品として売り出せそうでした。
しかし、全てがうまくいくわけではありませんでした。
清谷さんから頂いたものとは別の端布で試作したところ、糸がほつれてしまいました。
「fu-ko」の小ささでは多くの端布では糸がほつれ、製品にできるようなものとはならなかったのです。
清谷さんから頂いた布は一体どういう布だったのか、清谷さんは「大谷由美子さん」の布であると教えてくれました。
大谷さんは元丹波布伝承館の伝修生でした。
卒業後、丹波布の織り手として技術を研鑽 したいと考え、丹波布工房「丹の 布」を立ち上げ、代表を務められています。
技術を研鑽していくなかで、そもそも「柳宗悦が惚れ込んだ丹波布」とはどういうものであったのか、関心が湧き、現物を見にいかれました。
そこで保管されていたものはこれまで自分が触れてきた丹波布とは全く異質のものでした。
とても薄く柔らかかつしなやかで、ごわつきは一切なく、色はとても鮮やかで長年保管されていても色あせることはない、
とても美しいものだったそうです。
その時の思いが忘れられず、「柳宗悦が惚れ込んだ丹波布」を追いかけ、完全な復興を目指して 日々布を作ってらっしゃいます。
大谷さんの織る布が、端布であってもほつれないのは、紡がれた糸が均等である事に加え、細く柔らかであるためです。
「fu-ko」は、大谷さんの布に出会って実現することが叶いました。
縫製も清谷さんにご紹介頂き、以前清谷さんが丹波布のシャツを作ってもらったという株式会社Twenty様をご紹介頂きました。
社長さんの春木さんは丹波市が地元であるにも関わらず丹波布の存在をしらず、丹波布のシャツ作成の依頼を受けて初めて知ったという経緯をお持ちでした。
「若い奴らががんばってる手伝いがしたい!」と小ロットにも関わらず、作成して頂けることになりました。
ここまでの全てが「made in tamba」です。
こうなったら「全て丹波の人・もので制作したい!と思い、「fu-ko」を収納する桐箱の制作の相談に細見木芸さんを訪問しました。
細見さんは繊細な中にも木工加工技術をお持ちかつ、ユニークな遊び心をお持ちの職人さんです。
私たちが訪問した際も、作業場をご案内頂く中で、「「こんな形の桐箱があったらおもしろいかもね」と「fu-ko」の桐箱を提案頂きました。
蓋をすると継ぎ目が見えにくく、長方形の木のブロックに見える箱です。
また桐箱の印字は木工作家の細谷祐司さんにお願いしました。
普段からにいろの商品制作では大きな力となって頂いている方で今回もお力を貸して頂くこととなりました。
こうして全て丹波の「人」「もの」で生まれたブートニーが完成しました。
全て、丹波の人たちにご協力頂き制作し た、「made in tamba」の新しい「丹波布」の形です。
また本冊子のデザインに使われている花柄は、
実際の商品に使われている草木染めの原料となるヤシャブシ、こぶなぐさ、紅花、クチナシの実、綿花を組み合わせて私たち「にいろ」が作成しました。
丹波布を彩る丹波の自然を柄から感じて頂ければと思います。
商品を彩る桐箱・刻印・綿・パッケージも「fu-ko」に関わるものは全て丹波の「人」「もの」で作られました。
作業の手間と比較すれば断りを受けても全くおかしくありませんでしたが、みなさんの思いで「fu-ko」は完成しました。
決して大きな商品でも目立つ商品でもありません。
しかし「丹波布の魅力や物語を伝えるきっかけ」として「fu-ko」が多くの人々の「手」に「目」に触れることが叶えばこれほどの喜びはありません。